吉川 靖・「随想」

12.対北朝鮮での岡本行夫氏発言 

 
  2017年8月13日TVサンデーモーニングに出演した同氏は北朝鮮がグアムに向けて弾道ミサイルの発射を計画しており、実行されれば
 日本の上空を通過することに対し日本のとるべき対応について、何もしないで「いってらっしゃい」と見送るだけの対応をした場合アメリカは
 失望し「日本を守る」という安保条約は事実上機能しなくなり日本がいざと言う場合見放され裸で放り出されることになるだろう・・・との趣旨
 のことを述べた。また小野寺防衛大臣は(別の場で)同盟国アメリカが攻撃され反撃能力が毀損された場合、同国の武力にその安全保障を
 依存している日本にとって新安保法の集団的自衛権発動の要件である「存立危機事態」に該当する可能性はある・・・との認識を示した。
  これらの発言を聞いていると日本が直接攻撃される状況でなくとも、アメリカの戦争に日本も積極的に加勢することがありえるということだ。
 岡本氏は元外務官僚で外交や安保に精通した識者であり、いわゆる右翼という印象はなかったので若干驚きを覚えた。おそらくそのように
 考える為政者も多いのではないかと思う。
  集団的自衛権容認の安保国会でその危険性が危惧され、また安保条約成立当時にあった「巻き込まれ論」が半世紀たって現実味がでて
 きた感がある。「存立危機事態」の定義や解釈があいまいで、時の政権がいくらでも恣意的に運用できることが明らかになりつつある。勿論
 対外的にあいまいにしておく必要があるのは分かるがそれを口実に実際に適用条件にあいまいさを残し、時の為政者の裁量幅を広げるという
 狡猾さと危険性を感じてしまう。
  イラク戦争を始めたアメリカの判断が誤った情報をもとに起こされたことが先日のNHKのドキュメンタリでも放映されていた。時の小泉政権が
 いち早く支持を表明し協力したのは記憶に新しい。現安保法案のもとではより軍事的な協力が行われるであろうことは容易に想像できる。

 ・北朝鮮の主張
  同国は自国の存立を守るためには核武装しかないと考え先軍(軍国)主義を掲げている。核を持たないがために体制が崩壊した独裁国家の
 例をいくつも目の当たりにしてきたからだ。米韓の軍事的脅威を日々感じているのだろう。しかし「核兵器」をもたずに存立している国は沢山あ
 る。むしろ核を持つ国のほうが圧倒的に少ない。なぜか?結局は現在の専制独裁体制を守るという命題から出発しているからこのようになる。
 金一族や取り巻きの支配層の保身ということがその根っこになっており、人民のための政治を追求するのであれば世界と平和的に付き合う
 ことにし、軍事にかける原資はほどほどにして多くを民生に向けさえすればよいだけのことだ。
  こんな簡単なことは皆分かっているだろうがなぜ変革できないのか。少なくとも中国は民主的ではないにしても国の体制としての一応手本に
 はなりえるし、影響力はもっているはずだがいろいろな思惑があって事態は改善するどころか悪化して、朝鮮戦争の再発の危機が高まってい
 る。事が起これば日本も大変なことになる。ドイツやフランスの仲介に期待するまえに日本が体当たりで事態を打開する努力をしてもいいはず
 だがアメリカの顔色をうかがうだけというのは情けないことだ。

 ・打開策
  朝鮮戦争再発の危機を避け北東アジアの情勢を安定させる道なないのだろうか。北朝鮮は核を保持し現体制を維持するという頑強な意思
 を持っており、それを話し合いで変えることは期待できない。過去の六ヶ国協議などをみれば明らかである。かといって軍事的に一挙に変化
 させるのことは周辺国の犠牲は避けられず最悪の事態になりうる。とすれば今の北の意思を受け入れることから始めるしかないのではないか。
 西側が妥協して北の核保有を黙認したうえでアメリカとの平和条約を結び国交を再開する。その上で長期的に北の自らの改革開放をじっくり
 待ち、50〜100年くらいのスパンで平和国家になるのを期待する。アメリカとの妥協が成立すれば北は独裁体制を維持することになるが、
 国家体制をどうするかは本来はその国の主権の問題である。情報化が進み民衆の意識が変わってはじめて変革の芽がでてくるわけだ。ただ
 その過程で北が他国に害を及ぼすことはあり得る。その場合は国際的な枠組みで平和的になんとか治めていくしかない。中国やロシアなど
 独裁に近い国家は国際的に現在もいろいろと問題を起こしているが大々的な戦争になることはなんとか避けることができている。
 


 

  

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